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この世では、今日もいろんなことが始まる。
始まったことはいつか終わる。
この世では、今日もいろんなことが終わる。
終わったことはもう始まらない。
宇宙が始まる。始まると、それは終わりに向かっていく。
星が始まる。始まると、それは終わりに向かっていく。
星は言う。
「じゃあ君にも終わりはあるんだね。なんだか嬉しいよ」
宇宙は応える。
星は言う。
「でも全ては終わりに向かっていくんだろう?それも始まった瞬間から。それなら君が宇宙として始まった時点で、君は終わる運命にいるじゃないか」
宇宙は応える。
星は言う。
「ああ、なるほどね。確かに僕たちには君の終わりが見られない。その時には僕たちは終わっている。でもさ……」
星は言う。
「君を何より先に終わらせられたら…つまり、君を殺せれば、僕たちは君の終わりを見届けられるわけだ。その時、君は終わるが……僕たちはどうなるんだろうね?」
宇宙は応える。
呼びかけと応答。
呼びかけが無ければ応答はない。
つまり、呼びかけによって会話は始まり、応答によってそれは終わる。
今、ここで1つの会話が終わった。
1つの星の終わりは、宇宙にとってしばしの孤独の始まりであった。
宇宙は応える。宇宙は応える。宇宙は応える。宇宙は呼びかけられない。
また1つの星が終わる。また1つの星が始まる。1つの星は宇宙を見ることを始める。
また1つの星が終わる。また1つの星が始まる。1つの星は宇宙に呼びかけようとする。
また1つの星が終わる。また1つの星が始まる。1つの星は宇宙を捉えた。
星は言う。
「こんにちは。あなたが宇宙ですか」
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
会話は続く。
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
会話は続く。
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
宇宙は応えない。
会話は続く。
宇宙が応えることはない。1つの会話は終わった。また1つの会話も終わった。数えきれない星が終わった。数えきれない星が始まった。
ここに1つの会話がある。それは始まりを持った。それはいつか訪れる終わりを持つ。
宇宙は始まった。
宇宙はいずれ終わる。
宇宙が終わればもう応えることはない。
宇宙が終わればもう会話が終わることはない。
宇宙の終わりは、終わらない会話の始まりである。
いつか終わった星が皮肉に呟く。
「宇宙が終わる時が、楽しみだな」
この世では、今日もいろんなことが始まる。今日もいろんなことが終わる。
今日も1つの星と宇宙との会話は続いている。
宇宙が終わった時、終わらない会話は『始まる』。
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