旅立ち

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旅立ち

 最寄り駅の京成津田沼駅から成田空港に向かう快速電車は、佐倉市内に広がる水田地帯の真ん中をカタカタと揺れながら、ムカデみたいにじりじりと進んでいく。車窓から見えるのは、まだ田植えの始まっていない水田地帯だ。一面に広げられた段ボールみたいにでこぼこした薄茶色の地面は、なんだかひどく滑稽だった。その上に広がる雲一つない寂しい青空を眺める。三月初めの空は少し霞みがかっていて、春の訪れを感じさせる。僕はそんな淡い空の青さが、昔からあまり好きではなかった。
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