緑の国

散策

　どうやら、僕たちは海外旅行というものに向いてはいないようだった。観光ガイドブックに書かれていた、ダブリン城、クライストチャーチなどと言う観光名所らしきところには一通り行ってみた。それは確かに素晴らしい城や教会だったのだと思う。しかし、僕は残念ながら、映画やゲームに出てきそうな西洋風の城や教会、という感想以上のものを持つことはできなかった。
　そして、どうやらそれはゴッピーも同じであるようだった。彼はそうした建物を指差しては、でかいだの高いだのと言う他には、特に何を言うでもなく、わかった風に、うんうん、とうなずくばかりであった。そんなゴッピーの指差す先では、そうした歴史的建造物たちが、なんとも寂しそうな佇まいでうなだれているのだった。石で作られているであろうそれらの建物は、その灰色がダブリンの曇り空に相まって消えてしまいそうな、なんとも言えない悲壮感を醸し出していた。僕は、そんなゴッピーと歴史的建造物を対比して眺めるのが、1番滑稽で楽しかったのだった。