アイリッシュパブ

1/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ

アイリッシュパブ

 僕たちは、バス停のあったメイン通りを外れて、西に伸びる道を川沿いにひたすら歩いていく。市の中心を流れる大きな川はリフィー川というらしく、ダブリンの市街地を大きく北と南に分けていた。川も深い緑をしていて、大きな川なのに、結構な流速があり、ところどころに淀みができていた。川沿いの道には、多くの店が立ち並んでいたが、何の店なのかは英語で書かれていてよくわからないものも多かった。道を歩きながら、僕はふとゴッピーに尋ねた。 「そういえば、アイルランド音楽に触れたいとか言ってたけど、どこに行くか全く目星がついてないわけ? ライブハウスとかでやるなら、チケットとかとってなきゃいけないんじゃないの?」  ゴッピーは僕の問いに対して、笑いながら首を振った。 「金なんか要らないんだよ。アイリッシュパブっていう、バーみたいなところで、お金なんかとらずに、いっぱい演奏やってるんだってよ。俺はそれが聞きたいんだ。」 「それ、どこにあるの?」 「だからさっき言ったじゃん。それは知らねぇ。」  相変わらずの答えにがっくりと肩を落としたが、幸いにも、それらしき店はすぐに見つかった。川沿いの道には100メートルに一軒ほどの感覚で、それらしき店が立ち並んでいたのだった。店の外壁は黒や赤など様々で、店の前には酒樽を模したテーブルが置かれていたり、すでに大量に飲んでいると思わしき人たちが、赤い顔で楽しそうに語り合ったりしていた。そして、ほとんどのアイリッシュパブには「GUINNESS」と書かれた黒い看板がぶら下げられていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!