散策

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散策

 クークーというカモメの鳴き声で、僕は目を覚ました。薄いシーツと簡素な布団があるだけの2段ベッドの上段からはしごをつたって降りると、僕は部屋に備え付けの小さな窓から外を眺めた。灰色の石畳と石造りの建物のとんがりボウシみたいな屋根の上に、白いカモメが1匹、呆けたように止まっている。ダブリンの街は海に近いらしい。  昨日パブを後にした僕たちは、フライトの疲れから、宿に着くなりそのまま眠ってしまったのだった。僕たちが泊まっていたのは、リフィー川の北側にある、ジェネレーターズという名前のホステルだった。ホステルは、どちらかというと若い人向けの、大人数の相部屋での宿泊施設だ。お金のない僕らにはぴったりで、パブでビール2杯頼むほどのお金で泊まることができた。ホステルは8人部屋で、僕たちにはそれぞれ簡素な二段ベッドの上下が割り当てられた。部屋には他にも何人か欧米の学生らしい男女がグループで泊まっていた。僕はようやく起きてきたゴッピーとともに1階へと降りる。朝食として出される味気ないシリアルとパンを無言で流し込むように食べる。 「今日どこ行こうか?」  ゴッピーが聞くので、僕は右手でスプーンを持ちシリアルをかきこみながら、左手で持ってきていた観光ガイドマップをパラパラとめくった。 「ダブリンにも色々見どころはあるみたいだよ。城とか教会とか。とりあえず昼はそれまわって、夜は洋子さんの教えてくれた店に行ってみない?」 「うん、ヨッシーがそう言うならそれでいこう。」  ゴッピーは特に考えもせずに答えた。僕たちは食後のミルクを胃に流し込むと、荷物を持って、そそくさと宿を後にした。    
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