秋の風

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送別会が終わってみんなと別れる。 私のために送別会を開いてくれたことに、 感謝の気持ちでいっぱいだ。 バイトの先輩たちはみんなで私の就職を応援してくれている。 こんな幸せな事ってないよ。 この気持ちをすぐにでも先生に伝えたくて。 携帯を取り出し、先生に電話をかける。 試験までは勉強に本腰を入れるから、会うことを控えている。 毎日電話では話をしているけれど。 会いたいなあ。 今のこの気持ち、直接会って先生に話したい。 電話をかけると、すぐに電話にでてくれた。 「今ね、送別会終わったんだ。」 今日みんなで送別会をしてくれる話は、昨日、先生に電話で告げていた。 「おぅ、そうか。お疲れさん。」 先生の声を聞くと、会いたい気持ちが膨らむ。 「コウは?何してた?」 「俺か?俺は今仕事から帰ってきたところ。」 仕事!? 時計を見ると、9時を過ぎている。 「今日も残業だったの?」 最近の先生は忙しいみたいで、残業が多い。 やっぱり受験生の担任は忙しいようだ。 「色々やることあってな。おまえは?楽しかったか?」 「うん。みんな頑張れって応援してくれた。」 「そうか。」 電話越しでタバコを吸っているのがわかる。 会いたいなあ。 先生疲れてるよね?? でも、、、。 「会いたいな。ちょっとだけでもいいから、ダメかな??」 会いたいなんて言うのは、久しぶりで、言葉にすると少し恥ずかしい。 だけど、素直な気持ちをぶつけてみる。 「会うか。」 先生の返事に頬が緩んだ。 「うん!!」 駅にいる事を告げると、すぐ迎えに来てくれると言う先生。 嬉しい!! 会うのは1ヶ月ぶりだ。 私も論文や筆記試験の勉強に毎日追われていたし、先生も残業で忙しくしていて、会いたいと思ってもなかなか会えずにいた。 一か月ぶりに先生に会えると思うと、高鳴る鼓動。 ドキドキしっぱなしだ。 駅前のコンビニで待っていると、白い車が見えた。 久しぶりでドキドキする。 車は止まり、窓越しに先生の姿を確認する。 先生だ!! 頬が勝手に緩む。 助手席のドアを開け、先生の姿をもう一度確認する。 「おぅ、久しぶりだな。」 そう笑う先生の姿を見ると、胸が熱くなる。 少し緊張しながら、助手席に座った。 「勉強どうよ?進んでるのか?」 運転席に座る先生が、私に聞く。 「うん。論文は短大の先生から指導してもらってて、あとは、筆記の方を少し頑張れば、多分大丈夫じゃないかって。」 短大の先生も試験の過去問をくれたりして、協力してくれている。 このままでいけば受かるんじゃないかと言ってくれている。 その話をすると、先生は、「そうか。安心した。」と、少しほっとした表情を見せる。 先生の顔を見るとドキドキが止まらない。 会いたかった気持ちが膨らみすぎて、気づけば、言葉にしていた。 「すごく会いたかったよ!。何してるのかなって、いつも考えてた。会いたくて、この一か月、ちょっと辛かった。」 会いたくて、会いたくて。 でも、頑張らなきゃと、自分を奮い立たせてた一か月。 やっと会えたと思うと、一気に気が緩んでしまったんだ。 私がそう言うと、「そうだな。よく頑張ったな。」と言って、私の頭を優しく撫でる先生。 嬉し過ぎて涙が出そうだ。 先生は、私の頭を優しく撫でながら言う。 「俺もそうだよ。だけど、勉強の邪魔しちゃ悪いなと思って、会うのためらってたからな。俺もここ最近忙しかったし。悪かったな。でも、俺も、お前のことずっと考えてたよ。」 そう言って先生の唇が私の唇に触れる。 久しぶりすぎてドキドキが止まらない。 唇を離すと、先生は「やべぇな。久しぶりで俺もちょっと緊張してるわ。」と言ってふっと笑った。 先生もドキドキしてるのかな。 そうだといいな。 「展望台でも行く?」 先生が提案する。 「行く!」 即答する私。 車は展望台のある山道を登る。 先生とこの場所に来るのは何度目だろう。 秋空の下、目の前に広がる夜景を見て、幸せな気分になる。 「会えてよかったぁ。」 夜景を見ながら呟く。 「俺は少しヒヤヒヤしてたよ。試験まで会えねぇんじゃないかと思って。」 先生がタバコを吸いながら言った。 「二ヶ月は無理だよ。絶対無理!」 私がそう言うと、ふっと笑う先生。 「まぁ、あともう少しだからな。頑張れ。」 「うん。、、早く就職したいなぁ。」 私がそう言うと、先生が聞き返した。 「なんで?」 「だって、早く自立したいよ。働いたら、コウにもっと近づける気がするんだよね。社会人になっなら、同じ目線で考えられることも増える気がするし。」 「そんな事考えてたのか。」 「うん。今よりは少し大人になれる気がするんだよね。まだよくわかんないけど。」 私がそう言うと、またふっと笑う先生。 「俺に近づきたい、、、か。」 あれ、なんかおかしな事言ったかな、私。 そう思っていると、先生は照れたように笑って、私を背後から、ぎゅっと抱きしめたんだ。 「おまえは、ほんとに、、、。」 ??? 「可愛い。」 耳元でそう言われて、顔から火が吹き出しそうになる。 周りを見るとカップルがまばらにいる。 そんな中で抱きしめられて、そんな事言われるなんて。 「コウ!?。周りの人見てるよ!?」 「見てねぇよ。」 「もうっ、、、。」 まんまと先生のペースに持っていかれる。 いつものことなんだけれど、、、。 先生の腕の中は暖かい。 秋の風が冷たく感じていたから、先生の温もりがとてもあたたかく感じる。 「あったかい。」 「そうだな。」 先生に抱きしめられながら、しばらく、2人で夜景を見る。 会えてよかったなぁ。 秋の夜景を見ながら静かに時は流れたんだ。
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