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「僕さ、女の子のこと好きなんだよ」
いきなり何を当たり前のことを言ってくるのかと辟易としていると、私の表情を汲み取った谷川さんは、小さく首を横に振る。
「多分、佐野さんの思うものとは違う」
「なんでですか」
「女の子が好きっていうのは、異性愛ってことじゃないんだ。ただ、単に好きなんだよ。だから、僕は全然恋が続かない」
「言っている意味がよくわからないのですが」
「わからない方が、僕にとっては都合がいいから大丈夫」
ひらひらと手を振って「じゃあ、残業頑張って」と谷川さんはいなくなった。
なんともまぁ、嵐のような人だ。
恋愛だけではなくて、普通の会話でも嵐だったとは。
あと少しで資料がまとまる、もう少し、もう少し、と自分に言い聞かせながら作業を進めていると、社用携帯が鳴り響き、体がビクつく。
着信の相手は、秦さんだった。
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