innocent

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「まあ、かくいう俺も社内恋愛はちょっと抵抗感あるなぁ」 「あれ?結婚してないんですか?」 「いつ俺既婚者になったの」 「あれ?」 「あれ?」 私の真似をするように首を傾げた彼は、課のトップにするには若いと言われるくらいの年齢だ。 確か、40歳。 本当に確か、というレベルだからもしかするともう少し若いかもしれないし、もっとずっと上かもしれない。 どちらにしても、親近感があって頼り甲斐もある人だから、社内での信頼は厚い。 ただ、こんな人が独身なら、もっと女性陣が沸き立ってもいいものなのに、全く浮いた噂がない。 だから私は、自然と既婚者なんだと思い込んでいた。 「恋人がいるとか?」 「いない」 「空から美女が降って来るって期待してるタイプですか?」 「地面から出てきても嬉しいタイプ」 笑う彼の顔は、さっぱりとしていて、恋愛に興味などなさそうだった。 1人でも生きていけるような、そんな人に思う。
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