鏡の精の独白

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鏡の精の独白

   国を預かる者として産まれ、育った者は、産まれた国、それから嫁いだ国を存続させなければならない義務がある。  長く子に恵まれずにいた王妃に、どれだけ子の誕生を願う言葉が発せられたか。  また、産まれたばかりの女児を残して、王妃が亡くなられた時、家臣の多くが王妃の死より、男児が産まれて来なかったことに眉をひそめていたか。  そうして、そんな声に押されて、王妃の喪が開ける頃には、次の王妃になる人物が入城していた。  王よ、一刻も早く後継者を得なければならないという重圧は理解する。互いに愛し合っていた王妃の損失に密かに涙をこぼしていているのも知っている。だが、新たな王妃が国の秘宝である我で、くだらぬ真実ばかりを問うているのを、あなたは知っているのだろうか?   その問いが忘れ形見に、刃を向けられるであろう。  ……王よ、新たな王妃に、我を教えたあなたを軽蔑する。        
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