あなたが嫌い

お風呂にて

「りん、そんなことないのだもん」
『こいつ、顔を水に浸けられないって、顔を洗ったり、お風呂に入っていなかったりするんだぜ』
「りんは毎日顔を洗っているし、お風呂にも入って、洗っているもん。
　……プールが苦手だけなのに、なんであんな言い方するのよ」
　保育園の水遊び中、プールの中で足を滑らせて頭まで水に使って以来、肩近くまで水が来ると怖くて仕方がないないのだもの。
　あのときそんな自分を引っ張りあげてくれたキミ。そんなキミから、そんな言葉が出るなんて思わなかった。
　じわりと涙が溢れそうになり、頭ごとお風呂に沈ませる。
（私だけのヒーローだったのに……）
　ブケブクブク。
（私が毎日、怖いという心に、少しでも勝ちたいと思って、こうしているのに）
　ブケブクブク。吐き出す息と共に、言いたい言葉も吐き出していく。
（……嫌いによ……）
　ブケブクブク。すべての息を吐き出し、水面に顔を出す。
「何時か、プールであっと言わせるんだから！」