第1章 明日香と菜摘

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第1章 明日香と菜摘

(ユウ) 「はあ」 僕はため息鵜をつく。 とうとう1週間が過ぎた。 この1週間、日中は映画館などに行って時間を潰したり、神様から教えてもらった瞬間移動を練習していた。 瞬間移動は、目的地までをイメージして移動するため、僕の知っている場所を歩いて廻った。 歩くと言っても飛んでいるので疲れない。 生きている時に、こんな事が出来れば楽だろうと感じながら、それぞれの家まで移動して道順を覚えて廻った。 ただ明日香の所には、行きずらい。 死んでから2回も、我慢出来ずに僕の事を話そうとしてしまった時があった。 2回とも神様に止められて、その場をしのいだが、明日香に会ったら自信が無い。 だけど、明日香を守る為には、そんな事を言ってられないのだが、1週間経った今も自信は戻らなかった。 そんな自分の情けなさからか、ため息が止まらない。 家に帰って、自分の部屋に行きたいのだが、明日香にパソコンで別れを告げた事を思い出すのが辛くて、足が遠ざかっている。 今日は家に帰ってみようかな? 明日香への想いを自制出来るように、少しでも自身の心を強くしなくては・・・・ 陽も落ちて来て辺りが暗くなってきた。 僕は覚悟を決めて家に戻る事にした。 この1週間で完全にものにした、瞬間移動で自宅の玄関前に移動する。 もう完璧だ。 家に電気がついているので、玄関の戸をすり抜けて中に入ると、リビングにはソファーに座る母親の姿が見える。 母には本当に申し訳ない想いをさせてしまった。 父も亡くし、一人息子の僕までも死んでしまった。 そんなに広い家では無いが、女性一人で住むには広すぎる家になってしまった。 母はTVを見て微笑んでいるが、表情は心の底から楽しんでいる様には見えない。 母の心の声が聞こえる (何の為に生きてるんだろう?) 母は生きる希望を失っている。 (どうにかしてあげたいな) そう思っているが、能力が無い母には、話す事すら出来ない。 (ごめんね) 僕の声を聞こえない母に向かい謝ってから、自分の部屋に向かう。 部屋に入ると、正面の窓のカーテンは開いているので、月の灯りと街灯の光で、ほんの少しだけ部屋を真っ暗な状態から救ってくれている。 僕は真っ先に机の上のパソコンに目がいった。 1週間前、僕は神様からパソコンに乗り移り、明日香への別れを告げるように言われた。 物を持つことも触る事も出来なかった僕は、パソコンに乗り移り明日香への別れの文書を打ったのだった。 本当は言葉で伝えれば良かったのだけど、僕には明日香へ直接言葉で伝える勇気が無かったが為の行動だった。 僕は、その時と同じようにパソコンに乗り移った。 電源を入れて、しばらくすると、パソコンが立ちあがる。 あれ? パソコンの画面(デスクトップ)に、身に覚えの無いファイルがあった。 そのファイルの名前は 「能力者日記」 と書かれたファイルがある。 僕の日記の名前が「能力者日記」であり、中身は明日香との恋愛の内容ばかり書いてあった日記だ。 僕はそのファイルを開いた。 僕が明日香に送った文書が目に入ったが ? その下に明日香が文章を足していた ******* 20**年8月8日 ユウ、これを見たら 下に続けて書いて いつ、どこにいるか教えて ユウが何と言っても、私はユウと幸せになります。 私の幸せが何か? そんな事は、決まっているわ 例えどんな関係であっても、一緒にいる事です。 シーパラダイスで約束したでしょ! 忘れたなんて、言わないでね 明日香 ******* 更に 20**年8月15日 ユウ本当に居ないの? 明日、菜摘さんの黒い影を祓いに菜摘さんの家に行ってくるね。 菜摘さんに電話しても出てくれないから、直接行く事にします。 今日は父も居るので行けないので、明日一人で行こうと思います。 応援してね またここに来た時に、報告するね。 明日香 ******* ! えっ! 日記の様に、新たに文章が足されていた事にも驚いたが、今日もここに来た事にも驚いた。 それよりも (菜摘さんの家に一人で!) これは自殺行為だ。 何としても止めないと! 明日、その場所に行く事を決意した。 でも、もしかしたら上手く行くのかな?
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