第1章 明日香と菜摘

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(明日香) もう1週間か 今日は、父とユウの家に行く事となっている。 まだ一人で行くのは抵抗があり、父にお願いして連れて行ってもらう事になっていた。 「今日は、13時には店を開けるから、早く帰ってくるぞ」 父の言葉にうなづく。 朝の9時に家を出発する。 車を走らせて、もうすぐユウの家が近づくと、前方にコンビニが見えた。 ! (もしかして、菜摘さんの家?) 私の心の声を聞いた父が 「菜摘って、あの黒い影をした?」 「うん。ちょっとコンビニ寄っていい?」 「まあ、別にいいけど、気をつけろよ。誰に恨みを持っているのか分からないんだからな」 「うん。ジュースを買うだけだから。」 車はコンビニの駐車場に止まる。 車を降りてコンビニの入口に向かう。 辺りを見廻すと、近くに公園がある事に気がつく (あそこにユウが世話をしていた猫がいたのね。) 今は菜摘さんが世話していると言っていた事も思い出す。 そんな事を考えながら店に入る。 店に入るとジュースが置いてある場所に行き、冷たいお茶を持ち、レジに行くと、ユウの友達の圭君がレジに居た。 「あれっ?明日香ちゃん?」 確か圭君は菜摘さんの事が好きだと聞いている。 一応確認する。 「うん。ここって菜摘さんの家でやってるコンビニよね?」 「そうだよ。コンビニの2、3階が菜摘さんの家だよ」 「菜摘さんは?」 「何か部屋に閉じこもっているみたいだよ。」 「そうなんだ。ありがとう」 それだけ聞くと、ジュース代を払って店を出た。 ここが菜摘さんの家なのね 私は車に戻った。 「ここが菜摘さんの家だったわ」 「そうか、でも一人で行くなよ。何が起こるか分からないからな」 「うん」 車は駐車場を出て、ユウの家に着いた。 玄関を開けるとユウの母親が玄関まで出てきた。 「どうぞ、入って」 すぐにでもユウの部屋に行きたかったが、まずは父と一緒にリビングに向かう。 リビングに座ると、 「インスタントコーヒーだけど飲む? だけど、喫茶店の店長には口が合わないかしら?」 「おう、飲むよ。悪いな」 「明日香ちゃんも飲むでしょ?」 冷たいお茶を持っていたが 「はい、頂きます。」 すると父が心の声で話し掛ける (あれっ?お前さっき、お茶買わなかったか?) (いいの!) コーヒーが運ばれると1週間前の事で話が盛り上がり始める。私は急いでコーヒーを飲み干して席を立つ。 「ユウの部屋に行って来ていいですか?」 「どうぞ」 と笑顔で返事が来たので、急ぎ足で階段を登って、ユウの部屋に入った。 部屋に入ると、真っ先に机の上に置いてあるノートパソコンまで足を運び、椅子に座る。 (ユウから返事が来てますように) と願いを込めながらパソコンを起動させ、デスクトップ上にある、能力者日記をダブルクリックした。 そしてファイルが立ち上がった・・・が (ダメだ) ユウからの返事は無く、肩を落とした。 肩を落として、下を向くと引き出しが目に入った。 そうだ! 引き出しを開けて、この前はじっくり読めなかった、机の引き出しの中にある、ユウの日記を持ち、ベッドに座った。 暑い! 今になって、部屋の暑さと空気の悪さに気づく 私は部屋の冷房をつけて、空気を入れ替えるためにカーテンと窓を開けた。 ユウは、この場所とこの景色を見て育ったのね と感傷に浸る。 再度、ベッドに座り、コンビニで買ったお茶を飲みながら、ユウの日記を読み始めた。 能力者日記と書かれた日記は、最初の1、2日ぐらいまでは、能力について書いてあったが、それ以降は、私とユウの事ばかりであった。 ただ、この日記を読むと、ユウとの思い出が溢れてくる。 シーパラダイスのページを読むと何度見ても目が潤んでしまう。 ただ、ユウへの気持ちが再燃して、諦めない強い心が生まれてくる。 よーし! 私は机の椅子に座って、続きを打ち始めた。 ******* 20**年8月15日 ユウ本当に居ないの? 明日、菜摘さんの黒い影を祓いに菜摘さんの家に行ってくるね。 菜摘さんに電話しても出てくれないから、直接行く事にします。 今日は父も居るので行けないので、明日一人で行こうと思います。 応援してね またここに来た時に、報告するね。 明日香 ******* よし! 私は窓を閉めて、カーテンは開けたままにして部屋を出た。 階段を降りて、リビングに行くと ユウの母親が私に 「はいっこれ」 と鍵を私に差し出してきた ? 父がニヤついた笑顔で私を見る 「その都度、一緒に行かされたら堪んないから、めぐみに話したんだよ。」 差し出された鍵を受け取る時に 「一応、来るときは連絡してね。 明日香ちゃんは私の娘なんだから遠慮しないでね」 ユウに近づけた喜びからか、ユウの母親の優しさからか、涙が自然と溢れ出ていた。 「はい、ありがとうございます。」 「もう、ございますは、要らないって言ったでしょ」 私は笑顔で 「うん。ありがとう」 そして、父とユウの家を後にする。 家に着き、父は開店の準備に店に行き、私はリビングのソファーに座り、TVをつける。 すると携帯が鳴った。 携帯の画面に彩矢と表示されている。 私が能力を持っている事を知ってる友達で、一番の親友でもある。 電話に出ると 「明日香!ヒマ?」 「いきなり何よ!忙しいから切るよ。」 「ちょっと待って!切らないで!」 「もう、何よ?」 「明日、遊ぼう?」 「あれ?確か家族で旅行行くって言ってなかった?」 「父が仕事になって、行けなくなっちゃったの。 だから遊んで」 「もう勝手なんだから。 でも明日、菜摘さんの所に行こうと思ってたんだけど」 「えっ菜摘さん!私も行く!」 「まあ、しょうがないか。 でも遊びに行くのでは無いのよ」 「何しに行くの?」 「菜摘さんの病気を治しに行くのよ」 「えっ病気って?」 この後、黒い影の事、菜摘さんも能力を持った事を知らせる。 「えっ!菜摘さんも能力を持ったの?」 「あの事故の時からね。」 「ふ〜ん。そうなんだ。私は持ってないよ。」 「はいはい」 「もう明日香は、すぐそうやって私を軽く扱うんだから!」 「はいはい」 「そんな事言ってたら、明日後悔するわよ」 不安が過ぎる。 能力者は心の声を聞こえるだけでは無く、相手の想いも感じ取ってしまう。 例えば、殴るイメージが強ければ、殴られた感覚が伝わる。 彩矢の場合は、私を触るイメージをして、困らせようとしている事を言っていた。 「そんな事したら、友達では無くなるけど覚悟してね」 「えっ!恋人になるって事?」 「逆よ逆。絶交って事。取り敢えず切るわよ。」 私は電話を切った。 すぐにLINEが届く (何時?) (菜摘さんの家の近くの駅に13時! 1分も待たないから遅れないでね!)
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