328人が本棚に入れています
本棚に追加
アスペルジュ
季節が巡るからといって、時の流れは円をなしているわけではない。時の流れは線をなしている。そして、真っ直ぐに失われていく。静かに、美しく、ほろ苦く。
再び夏がやって来た。あれから、もう何回目の夏だろう?
その数が増えるにつれて、私はあの夏から遠ざかっている。遠ざかることで大切な思い出が、色褪せた過去になろうとしている。これ以上、あの夏から離れたくない。忘れたくない。もう一度だけ、近づきたい。
だから私は、歩き続けることにしたのだ。そして、カメラのシャッターを切り、フィルムに青を焼き付けることにしたのだ。私にとって青は大切な色。あの夏と繋がっている色。私がはじまった色。可能性を手放さないための色。あの夏の思い出が、今であり続けますように。アスペルジュ……。
最初のコメントを投稿しよう!