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タピオカの少女は、胸元が肩までざっくり開いた服を一旦整えて、タピオカドリンクをまた一口飲んだ。
「どんな人だと思う? お姉ちゃん」
桃色Tシャツに、ビールを注いでやる自身の姉に、少女は、依頼人の人物像を想像させる。その間、モチモチした黒い粒を口の中で大事に転がしながら遊ぶ。
「優しい人じゃないかな。オーナーのお知り合いみたいだし。緊張しなくても大丈夫よ、美香」
髭面だとか、痩せていそうだとか、太っていそうとか、そういう想像を期待していたタピオカの少女の美香だが、姉は意に反して笑顔で答える。思わず情けない声が出た。
「そういうことじゃなくて〜」
桃色Tシャツの女性は、少し酔いが回ってきたのだろう。先程のやる気とは、打って変わった様子だ。気の抜けた炭酸のようなフニャフニャした声を上機嫌で張り上げる。
「仕事が、休みの日なら、手伝うわねぇい。音大ちゃん、ビール!」
「ワンオペさん、飲み過ぎじゃないですか?」
酔っ払って気分が良さそうなワンオペを心配しつつも、音大と呼ばれた美香の姉は、言われたとおりに、ビールをジョッキに注いでやる。
打って変わって、青いワイシャツの女性は、赤ワインの入ったワイングラス片手に真面目に話をする。
「私は、もう少し自由がきくよ。会社に未練は無いし、休んでどうなろうと構いやしないわ」
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