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地獄谷6
蝦蟇は周辺の情報を聞き出しに行く。朱雀は庭の広い池から床下に潜り込む。まるでここは山の中の池のように靄が張っている。大婆の景色とはずいぶん違っていて何もかもが手入れされていない。大婆の話では陰陽道の大家として栄えていると言うことだったが。
床の下も蜘蛛の巣だらけだ。広い床下を人の気配を求めて動く。鋭い針が飛んでくる。
「お前は誰だ?」
「お前と同じ式神だ。だがもう腕が鈍ってここに住んでいる最後の式神だ」
暗闇から背むし男が出てくる。
「ここにいた式神はすべて出て行ってしまった。光栄さまは閉門となり酒におぼれ鬼女の虜になっている」
「鬼女?」
「安倍晴明の息子の時代になっている。双子の一人の吉昌が送り込んできた」
「式神か?」
「分からない。自分の目で見ることだ」
蜘蛛の後ろを付いていくと人の気配がする。床の隙間から酔いつぶれた男が見える。これが賀茂光栄か。横に薔薇の真っ赤な着物を着た女がもたれている。これは式神ではなさそうだ。それになかなかの美形だ。
「それが怒ると鬼になるのだ。すでにここの家人はすべて食われた」
どうも想像もつかない。大婆から手を出すなと言われている。それで気配を消して部屋に入り鬼女の髪を切り取る。その瞬間まさに鬼の形相になった。朱雀は吹き飛ばされて庭に弾き出された。それを受け止めたのは蝦蟇だ。
「調べたか?」
「ああ、どうも賀茂家は安倍晴明の代に落ちぶれたと言うことだ」
「あの鬼はお婆の力を借りないと無理だ」
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