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地獄谷5
地獄谷に戻り大婆に砦の話をした。どうも大婆は知っっているような顔をしたが何も言わなかった。朱雀は娘に形見の首飾りと鍵を渡した。歩けるらしく案内をして地獄谷の頂に上がった。ここからは微かに京が見える。朱雀はここが好きだった。修行の合間にここの岩に登って胡坐をかいた。
「朱雀って呼ばれているのね?」
「式神は名前がない。だが認められると大婆がこの名前をくれた。朱雀の名は2番目らしく初代はもう20年も前に殺された」
「私は静香と言うの。式神っていうのは?」
「大婆が作り出した魔物を言うようだがよく分からない」
「魔物?」
「朱雀、大婆が呼んでいる」
式神が呼びに来た。式神はここにいることをみんな知っている。静香を式神に任せて飛ぶように走る。社に入ると大婆が祈祷を上げている。
「賀茂家に行くのだ」
「・・・?」
朱雀はもちろん行ったことがない。
「お前の中には賀茂はしっかりと植え付けられているわ。だが捨てられてから2度行ったきりだからな。もう父も母も死んでおる。双子の兄もすでに死んでいる。今はその子の光栄の時代になっている」
「何をしに?」
「賀茂が滅ぶとある。どうなっているのか調べてくるだけで良い。蝦蟇を連れて行け」
蝦蟇を呼んで走り出すと自然と道が見えてくる。きっと大婆は生家を訪ねていたのだろう。京に降りてきょろきょろと街を見渡す。まさに下界だ。大婆の見ていた屋敷の前に来る。
「蝦蟇、何か感じないか?」
「魔物の臭いだな?」
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