最後の夜に

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「お父さん! お父さんってば、悲しいのは分かるけど、葬儀屋さんの方来られてるんだから、お酒ばかり飲んでないでちゃんとして!」 「あ、いやでも今、母さんが......」  まるで静かに眠っているような妻の枕元に置かれた笑った写真、 「お母さんと話してたの? 私も悲しいよ、でも今は明日の葬儀の打ち合わせしないと、お母さんが可哀想でしょ」 「あ、ああ、うん」  重い腰を上げて、美代の方へ歩くが、アルコールのせいか、足元がおぼつかない。 「ちょっと、飲み過ぎ! 最後までしっかりしてよ!」 「ご主人様、お気になさらずに、ゆっくりで構いませんので」  葬儀屋の人はニコリと笑ってくれる。その笑顔に謝り続ける美代をよそ目に、そろそろと椅子に座る。 「お父さん、本当しっかりして!」 「お前、母さんに似てきたな......」 「そりゃ、親子だもん、似るでしょ」  気配を感じ振り返ると、線香の匂いと妻の笑った顔が、再び涙を呼び戻した。  やっぱり俺は、お前と結婚して良かったよ......  ――了――
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