第2話 知佳

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「センチメンタル……」 ふっ、と笑って、そのボトルを引き出しにしまいこんだ。 “昔、好きだった匂い”。俺は、香水は付けない。多分、もう、付けないと思う。付ける必要が無くなったから。 洗いざらしの髪を、緩く梳く。 「久しぶりだ」 懐かしい友人に会うのも、会おうという気になったのも。休日に誰かとの約束が入ることも。 友人の選んだ場所は、大学生()は選ばなかったような、スーツ姿の多い店だった。 「久しぶり」 そう言ってグラスを合わせると、あっという間に、久しぶりだと思わせないような楽しい時間だった。 「忙しかったんだな」 「何、必死だっただけだ」 一通りの、卒業後からの近況報告が終わると、清はおもむろに切り出した。この古くからの友人、(きよし)は人を油断させる。込み入った話もすんなりと口を開かせてしまう。 「今、彼女いんの?」 「……デッカイ失恋したとこ」 「……お前でも振られんの?」 「そ、全然ダメ」 「そんなに好きだったわけ?」 「だな、好きで好きで……気がつきゃ、3年」 「ま、マジか!!」 久しぶりだってのに、暗くなりそうなのでこの話は止めた。同情されるまでもなく、終わった事だ。 「お前は?」 「あ、実は……最近彼女が出来たんだ。それでお前に確認!」 「……何だよ」 清の顔に緊張の色。確認?思わず眉根を寄せた。 「松原って、お前の元カノ?」 「……松原……覚えがないな。違う」 俺がそう言うと、清の顔色は戻り、安堵の長い長いため息を吐いた。
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