プロローグ

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懐かしい背表紙をパラパラと捲った。大学時代の短い期間の彼女の忘れ物だった。 その頃から俺は別れた彼女とは友達になれるタイプでは無かった。だから、気軽に付き合うのは向いていなかった。 理由も言わず、ただ 「別れて下さい」 彼女はそう言った。綺麗な微笑みを少し、浮かべて。 相手に別れを告げられたら、頷く以外の選択肢を俺は知らなかった。 終わり……これは、呆気ないそんな昔の恋の忘れ物だった。 ──── 「お願い」胸の前で両手を合わせて“友達”だった女の子はそう言った。 「好きになれないかもしれないよ」 「それでもいい」 「すぐ、終わるかも……」 「それでもいいの!」 懇願に近いような告白。好きになれる可能性は低い。分かってて首を縦に振った。そんな短い付き合いが何度か続いた。例え懇願されても、“告白されて付き合う”のは止めよう。相手にも申し訳ないし、自分も辛い。それに、“友達”を一人失うことにもなる。そう思い直した頃だった。
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