第1話 詩織

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「どう? 収穫あった?」 “婚活”の場を後にして、美沙子がそう聞いた。が、すぐに私の表情を見て、美沙子が笑った。 美沙子とは婚活会場で出会った。婚活も長くなると、男女共、“見たことあるな”って顔馴染みが出来る。明るく話しやすい彼女には 婚活(こんな場)など必要ないように感じる。感じのいい美人だ。 正直最近では、“婚活”よりも、その後の美沙子とのこんな品評会みたいな時間が楽しかった。 と言っても、ほとんど……“婚活”とは関係ない話をしていて、結婚を目標とした同士というより、気の置けない友人。大人になってからの友達なんて貴重な存在だ。 「詩織、そんなに綺麗なのにね」 「美沙子だって」 傷の舐め合いみたいになって、笑った。 「この前の、人なんて結構良かったとおもうけど……」 「うーん……キス出来ない」 「なるほど!」 「美沙子は?」 「なーんも、そろそろ他も考えないとね」 「……そう、だね」 「詩織もさぁ、引きずってないでさぁ」 「引きずってないよ、私は。ただ、彼を越える人が未だに現れないだけ」 それを引きずってるって言うんだけどね。二層になったカクテルをカラカラと繊細なガラスのマドラーが境目を無くしていく。上の色と下の色が綺麗に混ざると、マドラーを避けて、口に運んだ。
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