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「どう? 収穫あった?」
“婚活”の場を後にして、美沙子が一応そう聞いた。が、すぐに私の表情を見て、美沙子が笑った。
美沙子とは婚活会場で出会った。婚活も長くなると、男女共、“見たことあるな”って顔馴染みが出来る。明るく話しやすい彼女には
婚活など必要ないように感じる。感じのいい美人だ。
正直最近では、“婚活”よりも、その後の美沙子とのこんな品評会みたいな時間が楽しかった。
と言っても、ほとんど……“婚活”とは関係ない話をしていて、結婚を目標とした同士というより、気の置けない友人。大人になってからの友達なんて貴重な存在だ。
「詩織、そんなに綺麗なのにね」
「美沙子だって」
傷の舐め合いみたいになって、笑った。
「この前の、人なんて結構良かったとおもうけど……」
「うーん……キス出来ない」
「なるほど!」
「美沙子は?」
「なーんも、そろそろ他も考えないとね」
「……そう、だね」
「詩織もさぁ、引きずってないでさぁ」
「引きずってないよ、私は。ただ、彼を越える人が未だに現れないだけ」
それを引きずってるって言うんだけどね。二層になったカクテルをカラカラと繊細なガラスのマドラーが境目を無くしていく。上の色と下の色が綺麗に混ざると、マドラーを避けて、口に運んだ。
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