第2話 知佳

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第2話 知佳

“忙しい”なんて、ありきたりな断り文句を何度も重ねて来たのに 『予定が会えば来いよ』 学生時代の友人は何度もそう声を掛けてくれた。 『行くよ』 そう返信して、驚いたのは、向こうだ。“行く気”になったのは、長い恋の終わりの後味が、前向きな気持ちにさせてくれたからだろう。 少し持ち上げたボトルの、冷やりとした感触が手に馴染むまで、見ていた。……まだ、ほとんど残っている。仕事中に香水を付ける人は少ない。だけど俺は、にしか付けなかった。 俺は香水は変えない。ずっと、これ。鼻先に近づけると、ボトル越しに香る。いつもの香りはどこか懐かしく、愛しくも、重い。 そして……最後に背中を押してくれた。 恋の終わりと共に……この香りは、“俺の好きな香り”から、“彼女を思い出す香り”に変わっていた。
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