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第1話 詩織
職業、年収、家族構成、両親との同居の有無。
結婚後も仕事は続けるつもりだ。共働き希望で、家事も分担してくれる人。いや、むしろ全部してくれないかなー……って、そんな人はいないか。
“婚活”も始めて1年近く経った。“条件”だけならば、当てはまる人はそれなりにいる。
「分かってる……」
小さく一人言を溢した。
絶対に“結婚”向きではない、そんな男との恋を未だに思い出す。あれから7年。21の男と比べたって、ね。
嗅覚は、脳に直結している。心が揺さぶられるような感情を引き出され、身震いした。
自分を抱き締めるように、身を縮め、振り返った。雑踏の中へ消えて行く、その香りの主は……彼では無かった事にホッとする。そして、同時にがっかりもする。矛盾する心は、どう弁解しても誤魔化せない。
“遊びだった”
彼にとって、私は……。どんなに美化しようと、そう結論付ける。
私は、彼を……まだ、忘れられないのだ。付き合った年月の何十倍が過ぎただろう。“彼じゃない”そんな理由で何度恋を壊しただろうか。このままでは、一生一人だと始めた婚活で一体何人の男性と出会ったことか。何回“彼”と比べたことか。
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