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 ……なんか、緊張してきたな。  国民健康保険課も苦情の多い窓口ではあったけれど、勝手が違いそうだ。  そういえば、課長も七海さんも口を揃えて特殊だって仰っていたものな。なんてことを考えていたら、島の真ん中に設置されている子機が鳴りはじめてしまった。慌てて子機に手を伸ばす。勝手がわからずとも電話を取り次ぐくらいのことはできるつもりだ。 「はい、よろず相談課です」 「おや、あんた。新人かい?」  不信感の滲んだおばあさんの声に、あたしは精いっぱいの愛想を振り絞った。 「は、はい。三崎と申します。この四月からこちらに配属になりま……」 「新人なんだね、わかった、わかった。じゃあ、いつものお兄ちゃんに代わっとくれ、あんたじゃ話にならないからね」 「失礼ですが、お名前をお聞きしても……」 「だから、お兄ちゃんに代わっとくれと言っとるじゃないの! まったく、これだから役所の人間は」 「は、はい、あの」  お兄ちゃんと称されてもおかしくない人間が、少なくともふたりはいるのだ。保留ボタンを押したまま、おろおろと見比べる。 「あ、あの……」 「もしもし」  最後まで言わせてさえもらえなかった。不愛想に伸びてきた指が、子機を奪い取っていく。 「なんだ、ばあさん。またいちゃもんか」  市民の方に対する口の利き方ではないと思うのだけれど、漏れ聞こえてくるおばあさんの声は先ほどとは大違いにご機嫌で。  ――最初から、やらかした……。  電話の取次ぎくらいはできると自信満々だった数分前の自分が居た堪れない。
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