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「香代ーーまあ、大本命はあの子だろうね」  不二子の心を読んだように、暁美はそれを口にした。  他大学で一年後輩の香代。彼女こそ天才だった。  毎年春に行われる全日本大会は、不二子にとって去年の二年生が初めての出場だった。不二子はその大会の金メダルと国際大会出場の称号が欲しかった。周りもそれを期待していた。  しかし結果は、幼い頃からパルクールを極め、高校では数々の大会を勝ち倒してきた、大学デビューして間もない香代が優勝。  不二子の二位転落に落胆する周りの声、その何倍もの人が新しいスターの誕生に歓喜する声に、耳が痛かった。 「香代だけじゃない。春は新入生の時期でしょ。どんどん才能に溢れた子が入ってくる。パルクールはまだまだマイナースポーツだと思ってたけど、私の知らないところでも、活躍している人はいっぱいいる」
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