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「あんな高いところからバク宙しながら飛び降りれる奴が、なに弱気になってんのよ。大丈夫、あんたも才能の溢れる子だったでしょ」
厳しい言葉の中に垣間見える穏やかな励ましに、不二子は幾度となく救われている。
「でも、そんな悩みは早く捨てたほうがいい。あんたがやっている競技はね、一瞬の迷いが大怪我に繋がるんだから」
暁美が語気を強めて言うほど、競技中は一心に快楽を求めているだけで何も考えていない。
ただ、飛んでいないときにこそ不安は押し寄せてくる。
去年の全日本大会で二位に落ちてしまったのだって、一重に香代に負けたからではない。自分の前にパフォーマンスした香代に圧倒された自分や、プレッシャーに負けたせいだ。
「分かってる。ううん、そうだよね」
でも、そんな簡単に不安を取り去ることができるのなら、金属アレルギーにだって、苦しまずに済んだはずなのだ。
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