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「自分に勝て!」
飛び上がるほど強く、後ろから肩を叩かれた。それと同時に、からんからんと音を立てて、不二子の足元に松葉杖が落ちてきた。
暁美が前のめりになったとき、置いていた松葉杖に体が当たったのだろう。
「いいよ、拾わなくて」
不二子は立ち上がり、直接松葉杖に触れないようにタオルを手に巻いて拾おうとしていた。アルミ合金もアレルギー患者にとっては脅威である。拾わなくて済むならそのほうがいい。
暁美はクロックの片足をかばうように歩きながら、恐る恐る屈んで、松葉杖を取ろうとする。
気が変わった。不二子はタオルを巻いた手で、松葉杖を引ったくった。
「ねえ、もう治ってないふりはやめたら?」
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