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暁美は鼻で笑った。クロックスの足をかばうことなく直立している。
「流石にばれてたか」
「どういうつもり?」
「枷のつもりだったのよ。あんな大怪我をしたくせに、まだパルクールをやりたがっている自分への」
「やっぱり、そうじゃないかと思ってた。暁美、パルクールの選手だったのね」
「訊かれなかったし、自分から話す質でもなかったしね。怒ってる?」
暁美が顔を覗き込んできたので、不二子は思わず吹き出してしまった。
「別に怒ってないけど。じゃあ、その怪我は着地に失敗したとかで?」
「そう、練習中に。それも海外で。この際だから自分から言うけど、私も香代と同じように、大学に入る前からずっとパルクールをやってたの。大学一年生のとき、全日本大会で優勝、国際大会出場。その遠征中だった。海外の選手の凄さや日本での期待から勝手に不安を募って。一瞬の気の緩みで、練習中に三階以上の高さから落ちちゃった。一時は一生車椅子かもって言われてたのよ。まあ、不二子が心配してるほどパルクールはまだまだポピュラーじゃないから、あんたは知らなくて当然だったわけだけど」
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