6/8

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 暁美は鼻で笑った。クロックスの足をかばうことなく直立している。 「流石にばれてたか」 「どういうつもり?」 「(かせ)のつもりだったのよ。あんな大怪我をしたくせに、まだパルクールをやりたがっている自分への」 「やっぱり、そうじゃないかと思ってた。暁美、パルクールの選手だったのね」 「訊かれなかったし、自分から話す(たち)でもなかったしね。怒ってる?」  暁美が顔を覗き込んできたので、不二子は思わず吹き出してしまった。 「別に怒ってないけど。じゃあ、その怪我は着地に失敗したとかで?」 「そう、練習中に。それも海外で。この際だから自分から言うけど、私も香代と同じように、大学に入る前からずっとパルクールをやってたの。大学一年生のとき、全日本大会で優勝、国際大会出場。その遠征中だった。海外の選手の凄さや日本での期待から勝手に不安を募って。一瞬の気の緩みで、練習中に三階以上の高さから落ちちゃった。一時は一生車椅子かもって言われてたのよ。まあ、不二子が心配してるほどパルクールはまだまだポピュラーじゃないから、あんたは知らなくて当然だったわけだけど」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加