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「不二子ー! あんたまたベランダから飛び降りて! なんで玄関から普通に出られないの!」
余韻に浸りながら青空を見上げていると、ベランダから母が顔を出してきた。
「朝練だよ、朝練ー! いってきまーす!」
不二子はリュックを担ぎ、大学へ向かう。
通学途中でもトレーニングができるように、動きやすいスポーツウェアが制服である。
扉の前に座り込んだりイヤホンから音漏れしたりしているわけではないのに、電車のつり革に掴まっていると周りから睨まれるのは、ウェアの色使いが派手すぎるからだろう。
不二子にとっては周りが地味すぎる。この世界は豊かな色とデザインに満ちている。それなのに、どうしてみんな謙遜して無地の黒や白、ベージュを着るのか。
多種多様なアクセサリーだって、身につけてあげないと可哀想だ。不二子自身はほとんどのアクセサリーに触ることもできないのだから、腹立たしくもある。
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