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 大学の最寄り駅がアナウンスされた。扉に近づく。不意に車両が大きく揺れたとき、不二子はドア横の鉄の手すりを反射的に持ってしまった。  大学へ道のり、不二子は右手と右腕をむやみやたらに()いた。もう発疹が広がっている。それを目にしたら、全身まで(かゆ)くなってくる。焦って体が熱い。  不二子は金属アレルギーである。不二子は特に敏感なほうで、金属に触れると皮膚が必ず痒くなるのだが、意識的に重傷化させているきらいがある。  小学生のころ、自分が金属アレルギーと知らずにネックレスやイヤリングや指輪やらを好き好んで身体中に付け始めたときの経験が引き金となっているのだろう。身体中が痒くて(ただ)れて、掻いたところから血が出て高熱まで出して、大変な思いをした。  湿疹が引き痛みが完全になくなったのは、午前中の授業が終わったあとのことだった。  文系学部の三年にもなれば、一日授業を数コマ受けるだけで済ませたり、終日授業がない日を作ったりするのは容易い。今日は午後から授業がないため、思いっきり練習ができる。
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