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 不二子がパルクールに出会ったのは、大学入学直後のサークル勧誘のとき。それまでは存在すら知らなかった。  他のサークルが新入生に馴れ馴れしく声をかけたり、ひたすらビラを配っている端で、そのスポーツは消極的に紹介されていた。ヒップホップファッションの男子学生集団が、気取って校舎やベンチ、段差を使ってバク転や側転をしているのを見て、不二子は純粋に興味を持ったのだ。  機械体操とダンスを小学生から十二年間やってきた不二子にとって、一見近寄りがたい彼らに声をかけるのも、パルクールのコツを掴むのも簡単だった。  一年生の秋に、全国大会に出場。金メダルを獲得。  単なる才能の功績ではない。持ち前の運動神経があったからこそではあるが、本当に好きなものに巡り会えたからこそ、不二子は授業がある日もそうでない日も毎日練習に勤しむことができた。  ただのサークル感覚でやっていた大学四年生の練習量の累積に、わずか半年で追いついたほどである。
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