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銀
どうして怪我をしたのか。事故だとは聞いたが、深掘りして親友になった気になるのが性に合わなかったので、詳しくは知らない。
初めて出会ったのは一年半前。暁美はそれまで休学していたため同学年だが、年は一つ上で、そのときは車椅子だった。
暁美は下から四段目に腰を下ろした。
「相変わらず大技ばかり練習してるんでしょ。競技はパフォーマンス。絶妙な強弱がないと、表現力としては評価されないわよ」
「分かってる。通しではちゃんと意識してるから」
不二子は暁美の斜め下、下から二段目に座ってタオルで汗を拭き、スポーツドリンクを喉の奥に流し込んだ。
「焦りすぎなのよ。そんな状態で練習したって、身につくものも身につかない」
「だから分かってるって」
暁美が遠慮なくダメ出ししたり、不二子が苛立ちを隠さずに反発したりするのは、お互い仲が良いからだと思っていた。
でも、本当にそんな単純なことなのか、不二子が暁美に対して不信感を抱いているからか、不二子は正直分からなくなっていた。
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