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 ただ、確かに不二子は焦っていた。無性に苛々してしまうのもそのせいだろう。  二ヶ月後に控えた全日本大会が、その要因である。  パルクールの大会は、規模の大小を混同すると三ヶ月に一回のペースで行われており、不二子はそのほぼすべてに出場していた。  突如現れた新進気鋭のルーキーが一位に登りつめ、パルクール界の新鋭と呼ばれ、出場のたびに注目されるようになった。実は、陰に暁美の指導があったからこその結果である。 「次の全日本大会で一位になれば、不二子も国際大会出場かあ。しかも旅費は大会のおごり。海外はいいよー? 海外の選手は格上ばかりで、刺激になるし、大会が終われば観光できるし、美味しいものは食べられるし。あ、お土産買ってきてもらわないと」 「そんな期待、ぬか喜びになっても私は責任取れないからね」  ちょっと笑って見せて、不安を紛らわす。  不二子が一位だったのは、初めて出場した全国大会から一年生が終わるまでの(わず)かな間だけ。  二年生からは、ずっと二位に留まっていた。このままじゃ、一位にはなれない。
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