第3章

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仕事を終えて社内を出ると、程なくして彼が現れて、 「この先に隠れ家風の店を見つけたんで、そこに行こう」 言って、先に歩き出した。 ……路地を入ったわかりにくい場所にある古民家風の割烹で、通された席に落ち着くと、 「……珍しいな」 と、佐伯が口をひらいた。 「おまえの方から誘ってきたことなんて、今までなかったのに」 「今夜は、少し話があったからな…」 おしぼりで手を拭いてひと息をつく。 「……話?」と、彼が首を傾げる。 「ああ、飲みながらでも話すから」 オーダーをして、運ばれてきたワインでチン…と軽くグラスを合わせた。
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