第3章

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洗面所で、飲んでいた酒を吐き出した。 はずしたメガネを傍らに置いて、鏡に映る自分の顔を撫でさする。 ……僕は、 僕なのか……。 自らを、把握できない。鏡の中のその顔が、自分なのかわからなくなる……。 こんな……切なさに苛まれるのは、僕ではない……。 違うはずだ……と、鏡に拳を打ちつけた。 握り締めた拳の横に、涙を流して歪んだ自分の顔が映っている。 どうして、僕が泣くんだ………。 何のために、誰のために……。 ……くっそ…! わけもわからないまま襲われる哀しみに、洗面台につっ伏した。 蛇口を捻り、頭から水を浴びる。 ……泣く理由など、何もないのに。 なぜ、こんなにも泣けてくるんだ……。 なぜ……僕が、こんな思いを、抱えなければならないのか……。
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