第3章

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物音ひとつしない部屋で、締めた蛇口から滴る水の音が響く。 ……誰かに居てほしいと思う反面で、 誰にも居てほしくないと思っている自分がいて、 寂しいのかすらも、わからなかった……。 ……誰か、僕を救ってくれ。 僕を……この、やるせない思いから。 この、息が詰まりそうな思いから、僕を……。 濡れて、髪を流れ落ちる水と、嗚咽のように込み上げる涙にまみれて、 泣く訳も知れないまま、誰もいない部屋の中で、僕は、 初めて、声を殺して泣いた……。
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