第3章

27/55
前へ
/147ページ
次へ
答えの出ない悩ましさに、どうしてそう考えたのか、母の店に行ってみようと思い立った──。 母親はスナックをやっていて、僕は子供の頃からそれが嫌で仕方がなかった。 いつも男に媚びては誘いかけ、振られればまた次の男にしなだれかかる……そんな母の姿など見ていたくもなかった。 だから、独り立ちができるとわかった時、早々に親元から離れた。 その母の店に、なぜ今さら行こうと思ったのか……もう何年会っていないのかすらも知れなかった。 久しぶりに訪れると、 「……珍しいわね。あなたが来るなんて」 と、母が驚いた顔で僕を見た。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

503人が本棚に入れています
本棚に追加