第3章

30/55
前へ
/147ページ
次へ
「……そんな言い方、しなくてもいいじゃないの」 言われて、 「…ああ、悪い…」 と、その場しのぎな謝罪の言葉を返した。 「……頭が、痛くなるんだ…最近」 片手で頭を抱えたままで言う。 「頭痛がするなんて、なんかいろいろ考え過ぎたりしてるんじゃないの?」 あまりにあっさりと心の内を見抜かれて、 「……どうして、そう思うんだ……」 半ば呆然と呟く。 「……だって、苦しそうな顔してるから。そんな顔見れば、誰だってそう思うわよ」 「……苦しそう…僕が……」 グラスから酒をごくりと飲み込む。 飲んで泣いたあの夜の記憶が、まざまざと頭の中に蘇ってくる。 「……違う」 さっき声を上げて否定した一言を、再び喉の奥から絞り出すと、 相変わらず会話の糸口さえも見つけられないことに、苛立ちばかりが募り口をつぐんだ……。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

503人が本棚に入れています
本棚に追加