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「もっと自然にいればいいのよ。……欲望のままにいることが、何がいけないの? 聖哉は、深く考え過ぎなのよ」
「……欲望のまま、あんたみたいにいろってことなのか……」
昔のことが思い出されてくる。いつも違う男と連れ立っていた母の姿が脳裏をよぎる。
「……私みたいにいろってことじゃないわ。私は、私よ。私の生きたいように、生きてきただけ。あなたも、自由に生きたかったら、そのがんじがらめの鎖をはずしてやりなさいよ」
「……がんじがらめの鎖…」
そんなものは巻き付いてもいないのに、自分の身体にふと目を落とした。
「……それに私だって、あなたを愛していたのに、愛してたことを忘れちゃったの?」
母が、瞳をじっと合わせて見つめる。
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