第3章

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……間が空いて、それを埋めるように、 「……飲んでも、ちっとも顔にも出ないのね?」 母が酔って赤くなってきた顔を向ける。 「……酔えないんだ、少しも…」 グラスの中身を喉に流し込んで口にする。 「……片意地張ってるからでしょ? 酔って、醜態を晒したくないとかって」 「……酔っ払えばいいとでも言うのか…自分を見失う程……」 飲み干したグラスをカツンとカウンターに置く。 「……そういうのだって、時には大事って話よ…」 酒でわずかに掠れた声で言って、母はふっと笑い、 「……そう言えば、あの人もお酒には強かったから。あなたも、そんなところが似ちゃったのかしらね?」 口にするのに、 「あの人って……父のことなのか?」 と、尋ね返した。 「そうよ…そうだ、話してあげるわね。あなたのお父さんのことを……」
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