第1章

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ピンポーン……。呼び出されたインターホンの画面を面倒な思いで覗いて、 「開いてるから、入れ」 素っ気なく返した。 唇に付けが真っ赤な口紅がやけに目立つその女は、何がおかしいのかまたクスッと笑うと、部屋に入って来た。 「……飲んでたの?」 テーブルに目を落として、話しかけてくる。 「ああ……」 「スーツも脱がないで飲むなんて、よっぽど飲みたいことでもあったの?」 彼女が横に腰を下ろすと、付けている香水がぷん…と鼻をついて匂った。 「そんなんじゃない。別に、飲みたかっただけだ」 「そう……、だけどネクタイぐらいはずしなさいよ」 締めているネクタイに、口紅と同じ赤いマニキュアの付いた手がかけられる。
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