第3章

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「……この間の約束だが、」 冷えた白ワインの一口で喉を湿らせて切り出すと、 「こないだの?」と、彼は一瞬考え込んで、 「……もしかして、いつかのパートナーの約束か?」 と、再び首を傾げた。 「そうだ」 「……答えてくれるのかよ? あの約束に」 手にしたグラスからワインを口に含んで、 「保留にした答えは、いずれ決める必要があるだろう」 言うと、 「相変わらず、言い方はおまえらしいのな…」 クッと小さく彼が笑うのに、 「……約束は、受け入れる……」 と、話した。 「……受け入れるって、」ごくっと喉を鳴らすと、「ウソだろ…本当にか?」 佐伯が本気で驚いた顔つきになる。 「……本当だ。おまえがいつまでも結婚しなければ、僕がパートナーになってもいい……」 「……嘘みたいだな。まさかおまえからそんな言葉が聞けるなんて……なんか夢かも」 言いながら自分の頬をぎゅっと摘まんで、「痛ってぇー」と、佐伯は笑った──。
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