503人が本棚に入れています
本棚に追加
次々と投げかけられる真っ直ぐな気持ちに、
「……だが、確かなプロポーズとかをしたわけでもないだろうが」
対応もし切れずに、手持ち無沙汰にワイングラスを持ち上げると、
「……いつかは、おまえも他の女性と結婚もありうるのかもしれないんだから、僕との約束はただの不確かなものに過ぎない……」
ワインをひと息に喉の奥へ流し込んだ。冷たい喉越しにぶるりと身体に震えが走る。
「……そんなのわかってるよ。わかってるが、それでもいいんだって」
その僅かな震えを察した彼が背中をさすって、
「……やっぱり、変わったよな。聖哉…おまえ」
言いながら、僕の顔をじっと窺った。
「……どこがだ。僕は、どこも変わっていない」
目をそらして、テーブルに置いたグラスの中身に視線を移す。
「以前より穏やかになっただろう。メガネの奥の瞳が優しそうにも見える……。なぁ、何かあったのか?」
こちらを覗き込むようにも見られて、
「……何もない」
とだけ、答えた。
最初のコメントを投稿しよう!