第1章

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──朝早くに目覚めると、部屋にはもう女の姿はなかった。 「始発で帰ったのか」 その時刻に帰るのなら、どこかで時間でも潰せばよかっただろうに……。わざわざ僕の部屋へ来なくてもいいように感じた。 ただただ嫌悪感しかなく、眉間にしわが寄るのが自分でもわかる。 「……したかっただけか」 口にすると、よけいに刻まれたしわが増えたらしいたことが知れた。 ベッドの下に、イヤリングが片方だけ落ちているのが目に入って、 拾い上げると、ゴミ箱にそのまま投げ捨てた。 こんなものを口実にまた来られたら、単に迷惑でしかなかった。
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