第1章

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"取りに行きたい"などと言われたら、なかったと答えるだけだ。 ……あの女とも、そろそろ潮時なのかもしれない。 付き合いに嫌気が差して、抱くことさえも億劫でしかない。 ……自分は、いつもこんな風にしか恋愛を考えられない。ゴミ箱に放り込んだイヤリングが目に入る。 ……だが、それの何がいけないんだ……。 シャツに袖を通して、ネクタイを結ぶ。 僕には、誰も必要ない。要らないものは、切り捨てられて当然だろう……。 かけたメガネを指の先で押し上げて、マンションのドアを開く──。 ……当然ではないのなら、どうしてそれが必要なのかを、僕に説明してくれ……。
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