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「あまりうるさいなら、もう帰るからな」
カウンターに手をついて立ち上がろうとすると、
「ああ、待てよ。悪かったって、もう言わないから、もう少し付き合えって」
スーツの袖が引かれ、脚の長い丸イスにまた座らされた。
「……だけど、おまえ、なんで誰も好きにはならないんだよ?」
佐伯が、咎められたのを気にしてか、声のトーンを僅かに落として、アルコールを口に含む。
「……終わりが、見えるから」
「……終わり?」
と、不思議そうに尋ねられる。
「好きになれば、終わりが見える。付き合いに先が見えて、別れの予感がよぎる」
ストレートのジンを舐めるように飲む。
「だから、誰も好きになりたくはない」
「……難儀な奴だな、おまえって」
呆れたような顔をする佐伯を、自分も同じような表情で見返した。
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