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第2章
……それから、彼とは何度か体を重ね合わせた。
たまに飲んで、ホテルに流れるだけの関係だったが、向こうも言っていたように、それ以上の感情は何も求めてはこなかった。
「……聖哉って、呼んでもいいか?」
「おまえが呼びたければ、勝手にしろ」
「……。なぁ聖哉……、」ベッドでひと息をついた佐伯は、「おまえを名前で呼ぶ女って、どれくらいいるんだよ?」と、訊いてきた。
「さぁな、数えたこともないから、わからない」
頭には付き合いのある女の顔が幾つか浮かんだが、誰が自分を名前で呼んでいるのかなど特に憶えてもいなかった。
「本当に、感情がなんにも動かないんだな。おまえって」
傍らに寝ていた佐伯が手を伸ばして、僕の額に落ちた前髪を掻き上げる。
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