3.前世関係者

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「勘弁してよ、尚親ぁ……」  帰宅して早々、私はベッドに寝転びながら暫く部屋の天井をぼーっと眺めていた。今日は一日中前世の事ばかり考えていて、現実を疎かにしていた気がする。  それもそのはずだ。前世に関わる人間が二人も学校にいたのだから。 「ショウさんの占い通りのことが、本当に起こりつつあるな……」  『実は……近々君、前世で深い縁のあった人に次々と出会いそうだ』というショウさんの忠告を思い出した。 「まさか学校に元正室と元側室がいるなんて……」  前世を知った元正室の浅井先輩は、その立場を利用して慣れ慣れしくしてくるし。部活の後輩である元側室の三沢君は、私を尚親の生まれ変わりだと思っていると言った後、 「井上先輩、あの先輩と仲いいんですか? あんなこと言って先輩を取られるくらいなら……俺も先輩と仲良くしたいです!」 と言って、その流れで連絡先を交換してしまった。 (浅井先輩は目的があって私に近づいてるだけだけど、三沢君の場合は……)  三沢君こそ、私を気にしているのは前世で尚親と桔梗に縁があったからで、本当に私を異性として気にしているかは怪しいものだ。 「あ゛ーーー!!! もうわけわかんない! アイス食べよ!!」  考えても答えの出ないことは考えないに限る。台所へ行き、冷凍庫を開けた私は、眉間に皺を寄せた。 「アイスが無い」  頭を冷やそうと思っていた矢先に目的のアイスが見つからないと、余計にイライラして頭が沸騰する気がした。それに加えて、私のぼやきが聞こえたのか、居間からは「アイスはお母さんの湯上り用でーす」という声がする。 「じゃあちゃんと補充しとかないと!」 「あんたに関係無いでしょ?」  そういうぞんざいな扱いを受けると、意地でもアイスを買わないと気が済まない使命感が生まれた。私は謎の怒りに任せて自室から財布を取ってくると、そのまま玄関へと直行する。 「コンビニ行ってくるー」  「本当に!?」という母の驚嘆を背に受けながら、私は近所のコンビニへと向かった。  勢いにまかせて外へ出たものの、思っていたより夜道が暗くてすぐに意地を張ったのを後悔した。それでもコンビニが近づけば辺りは一気に明るくなり、その後悔もすぐに忘れる。  コンビニには二、三人のお客しかいなかった。一番大好きなソーダ味のアイスキャンディーを手に取り、レジに並ぶ。さっと買ってすぐに帰れそうだと思っていたが、私の前で支払いをしている男性客が、いつまで経ってもそこから帰る気配がなかった。 「あれ? ……マジで? ウソでしょ!?」 という声が聞こえ、財布の中をゴソゴソと漁っている。見ると目の前のカウンターには、夕飯と思われる弁当の入ったビニール袋。レジの値段は850円を表示していたが、カウンター上には500円玉しか出されていない。 (350円足りないのか……)  すぐに帰ってアイスを食べたいのと、早くしないとアイスが溶けてしまうのもあって、私は後ろから500円玉をそっとレジの上に置いた。
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