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「紹介する。この人は、柴山悠貴さんと言って……前世で俺達は親子だ」
「え!?」
一瞬意味がわからなくなって息を飲んだ。
「『前世で親子』って……ショウさんと柴山さんにも、前世の記憶があるんですか!?」
二人は同時に頷く。こんな偶然が同時に沢山存在していいものなのだろうか。それとも前世の記憶を持っている人というのは、案外世の中に沢山いるものなのだろうか……。
柴山さんはショウさんの隣に座りながら、
「君が直緒さんだね? 晶から話は聞いてます。前世では晶の父でした」
と微笑みながら、胸元から小さなケースを取り出して、中から一枚名刺を手渡した。そこにはこう書かれている。
『柴山電機 取締役 兼 事業部長 柴山悠貴』
「柴山電機!? あのTVとかの家電で有名なSHIBAYAMA……ですか!?」
「うん、まぁそうだね。柴山電機は祖父の作った会社なんだ」
ということは、いずれはこの大企業の社長になる人なんだろうか……。何だか凄い人に出会ってしまった気がして、目の回る思いがした。
「柴山さんが俺の客として来たのが、俺達の最初の出会いだ」
「そうそう。秘書の子が晶に占って貰っていてね……その時私は家業を継ぐべきかどうか悩んでいたから、よく当たるで評判の前世占い師に視てもらおうと思ってね」
「やめてくれよ」
ショウさんは照れながら自分の評判を否定した。傍から見ても、2人はとても仲が良さそうだ。
「初めての占いで前世は教えて貰ったけど、私達が前世で親子だって事までは教えてくれなかった。晶は既に気づいていたみたいだけどね」
「あの時は……そこまで言う必要を感じ無かったんだ。こんなに親しくなると
も思って無かったし……」
「ははっ。意地悪だったかな」
ショウさんは少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。占い師のせいか、随分大人っぽい印象に見えていたショウさんだったが、柴山さんの前では年相応かそれ以下に見える。そんな二人の様子から、互いが本当に心を許し合っている仲なのを感じた。
「お二人は、頻繁に会っているんですか?」
私の問いに彼らは一瞬顔を見合わせたが、
「そうだね。今でも時々躊躇するような決断を下す前には、晶に占って貰ってるよ」
「俺はもう柴山さんからは鑑定料を貰ってない。いらないって言ってるんだが、いつも柴山さんはその代わりにいろんな所へ連れてくんだ」
困り顔のショウさんだったが、柴山さんは意に介さず「この前行った店、美味しかったよな。また行こう」と上機嫌だ。
「直緒さん。俺は占いでいろんな人の前世を覗いたが、前世で縁の深い人に現世でも巡り会うのは、別に俺らに限られた珍しい事でも何でも無いんだ」
「え……?」
「この世に生まれた人は、少なからず前世で縁のある人達に囲まれながら生きている。ただ、それに気づいていないだけで」
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