4.浸食される現世

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「紹介する。この人は、柴山(しばやま)悠貴(ゆうき)さんと言って……前世で俺達は親子だ」 「え!?」  一瞬意味がわからなくなって息を飲んだ。 「『前世で親子』って……ショウさんと柴山さんにも、前世の記憶があるんですか!?」  二人は同時に頷く。こんな偶然が同時に沢山存在していいものなのだろうか。それとも前世の記憶を持っている人というのは、案外世の中に沢山いるものなのだろうか……。  柴山さんはショウさんの隣に座りながら、 「君が直緒さんだね? (あきら)から話は聞いてます。前世では晶の父でした」 と微笑みながら、胸元から小さなケースを取り出して、中から一枚名刺を手渡した。そこにはこう書かれている。 『柴山電機 取締役 兼 事業部長 柴山悠貴』 「柴山電機!? あのTVとかの家電で有名なSHIBAYAMA……ですか!?」 「うん、まぁそうだね。柴山電機は祖父の作った会社なんだ」 ということは、いずれはこの大企業の社長になる人なんだろうか……。何だか凄い人に出会ってしまった気がして、目の回る思いがした。 「柴山さんが俺の客として来たのが、俺達の最初の出会いだ」 「そうそう。秘書の子が晶に占って貰っていてね……その時私は家業を継ぐべきかどうか悩んでいたから、よく当たるで評判の前世占い師に視てもらおうと思ってね」 「やめてくれよ」  ショウさんは照れながら自分の評判を否定した。傍から見ても、2人はとても仲が良さそうだ。 「初めての占いで前世は教えて貰ったけど、私達が前世で親子だって事までは教えてくれなかった。晶は既に気づいていたみたいだけどね」 「あの時は……そこまで言う必要を感じ無かったんだ。こんなに親しくなると も思って無かったし……」 「ははっ。意地悪だったかな」  ショウさんは少し恥ずかしそうに視線を逸らしていた。占い師のせいか、随分大人っぽい印象に見えていたショウさんだったが、柴山さんの前では年相応かそれ以下に見える。そんな二人の様子から、互いが本当に心を許し合っている仲なのを感じた。 「お二人は、頻繁に会っているんですか?」  私の問いに彼らは一瞬顔を見合わせたが、 「そうだね。今でも時々躊躇するような決断を下す前には、晶に占って貰ってるよ」 「俺はもう柴山さんからは鑑定料を貰ってない。いらないって言ってるんだが、いつも柴山さんはその代わりにいろんな所へ連れてくんだ」  困り顔のショウさんだったが、柴山さんは意に介さず「この前行った店、美味しかったよな。また行こう」と上機嫌だ。 「直緒さん。俺は占いでいろんな人の前世を覗いたが、前世で縁の深い人に現世でも巡り会うのは、別に俺らに限られた珍しい事でも何でも無いんだ」 「え……?」 「この世に生まれた人は、少なからず前世で縁のある人達に囲まれながら生きている。ただ、それに気づいていないだけで」
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