13人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「どうして、あなたはそう変わらないの」
リサの呟きを、若返った僕の耳は拾ってしまった。それはとても小さかったけれど、とても悲しげな響きを持っていた。
「僕はもう行くよ。君はどうするの?」
僕が聞くと、リサは珍しく口を噤んだまま、ごく稀に、本当に稀だけれど、たまに僕に向ける、とんでもなく冷たい視線を、その時投げかけ、それから目を伏せ、ぷいとそっぽを向いてしまった。
聞こえたのだから良いかと、僕は宇宙船に乗った。飛び立って次の星へと向かう。
この惑星には植物以外の生命体はいないようだった。きっとあの時間の流れの速さに耐えきれないのだろう。リサはいつまでいるつもりなのか。少し心配になって僕は暫く近くを飛んでいた。
三十分ぐらい様子を眺めていたと思う。オパールの惑星が小さくなったように見えたかと思うと、一瞬白銀の強い光を放ち、そして消えてしまった。
若返りすぎて、そのまま生まれる前の時まで遡ってしまったのだと思った。
「リサは?」
僕は計器をいじってリサの宇宙船を探した。まさかずっと動かずに、そのまま一緒に生まれる前にいってしまったのだろうか。
君まで、僕を置いていくのか。
最初のコメントを投稿しよう!