アブルニー

3/20
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「全く、こんなところで人生を終えるなんて。私ったら爪が甘いわね。 餓死するのがいいか、沼地で窒息死するのがいいか、それともサファイアに頭でもぶつけようかしら。自分で首って締めれるものなのかしら。試す価値はあるのかもしれないわね。 それとも、地球みたいに人肉も食べてしまう凶暴な生物がいたりするかしら? それだったらそれが一番いいわね。食べられて死ぬなんて、ロマンチックだわ。 でも、百歳のおばさんなんて美味しくないもしれないわね。ああ、もっと若かったら良かった。長く生きても良いことなんてないわ。地球と一緒に消えておくべきだったかしら。 なんで月も一緒に消えなかったのか不思議で仕方ないわ。あの大質量の地球が一瞬で消えるぐらいなんだから、少しぐらい月に影響があってもおかしくないのに。 本当に、この宇宙には謎が多すぎて飽きないったら」  サファイアのつるつるとした壁を眺めながら、さらに周囲を分析する。自分がいる位置を起点として、右斜め四十五度の方向に奥へと続く通路があるようだ。  左上を見上げれば天井に穴が開いている。ぐるりと後ろを向くと、エメラルドの沼地を越えた先にも奥へと続く道が見えた。  ここは密室ではなく、一つの大きな洞穴で、ここからどこかへ繋がる道はいくつかあるようだ。  溜息をついて立ち上がる。右足が目視で赤く腫れているのがわかった。熱を持っていて、ずきずきと他の生命体が寄生しているかのように脈打っている。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!